Capriccio(奇想画)

2010年5月31日 (月)

奇想画その16:スフインクスの謎掛け

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Sphinx

アポローンの神託を聞いたオイデープスは驚き恐れ、彼が自分の国だと思っているコリントスには帰ることなく、宛もなく乗ってきた戦車を走らせます。
ある狭い山の三叉路に差し掛かったとき、前方からも戦車に乗り、供を連れた老人がやってくるのにかち合いました。 
道を譲ることに関して諍いが生じ、老人が怒って鞭でオイデープスを打ち、反撃したオイデープスのために車毎谷に落ちて死んでしまいます。 
オイデープスは山を下りて麓の都市に入りましたが、そこでは大騒ぎが起こっていました。
山賊が出て王を殺した、と言うのです。 
そのうえ此の都では魔物が出て民を苦しめていました。 
それはスフインクスという人面獣身の怪物で、山道で通行人を捉え、謎かけをして正解をしなかったら捉えて食ってしまう、と言う災難でした。
そのことを聞いたオイデープスはその山へ行き、スフインクスに対峙します。
スフインクスが問いかけてきた謎とは、こういったものでした。
「朝には四本足で歩き、昼は二本足で、そして夕には三本足で歩くものは何か」
オイデープスは答え、正解を聞いたスフインクスは自ら谷に身を投げて死にました。
こうして此の国の難儀を救ったオイデープスは乞われて王となり、残された王妃イオカステーと結婚することになります。
此の国がテーバイであり、殺された王の名がラーイオスであったことは、云うまでもありません。
オイデープスは善政をひいて慕われたのですが、やがてコリントスからの使者が来てポリュポス王が亡くなったことを伝え、帰国するようにすすめます。
未だ母がいるから、と オイデープスは神託を盾に拒否しますが、その時に彼が捨て子であり、拾われた時の事情が明るみに出るのです。
アポローンの神託が既に実現していたことを知った母である王妃イオカステーは自殺し、オイデープス王は運命を呪って、自らの目を刳り抜いて盲目となり、放浪の旅に出た、と伝えられています。

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スフインクスと言えばエジプト。 
なかでもギゼのピラミッド群の前に構えている巨大な姿は有名です。
この怪物の由来については、ここでは詳らかではありません・・・何しろこのシリーズは一応ギリシャに特化しているものですから。
そして此のオイデープスの伝説に登場するスフインクスが、物語上どのような姿かたちであったのか、も、よく知りません・・・・何しろ原典を読んだわけではないもので。
ただし、この画面上に現れたスフインクスは、由緒正しいギリシャのスフインクス像です。
デルフイはアポローンの神域内、高さ10mもあったという、ナクソスの柱の上に乗っていた古典期の有翼スフインクス像。 
イメージとしては我々の持つエジプトのものと少しも変わりません。
建築や他の人物彫刻などでは両者は結構異なった印象を持つのに、此の怪物だけはまったく変わらないのは不思議な気がします。 あるいはエジプト直輸入の文化だったのかも。

ところでスフインクスの謎の正解は?  
それは人間。 はじめ四つ足で這い、最後には杖をついて歩くもの、でした。

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このスフインクス像はデルフイ博物館に所蔵、展示されています。  
柱頭部から上だけで、写真のように相当部分が後補されていますが、往時の雰囲気はしっかり伝わってくるものでした。
下に組み敷かれている犠牲者はまったくそれとは関係なく、ルーブルにあった多分ヘルムスアフロイデの像を、一寸したデジタル的悪戯で貼り込んで一体化させたものです。
そして背景の山はデルフォイ神域のバックに聳えるパルナッソスの山塊。 
岩の色も空の色も此のシリーズ風に恣意的に改変していますが、山肌のテクスチュアに関しては全くこのような印象の山々なのです。
また此のシリーズの画は原則背景と彫刻の二枚のフイルムの合成ですが、この画だけは四つの元フイルムから成り立っています。
ではその四っめはどこに? 
実はオイデープスがちゃんと画面に登場していて、今からスフインクスに会いにやってこようとしています。 
山道の遙か向こう、生贄の指の下辺りに小さくちいさく其の姿が見える筈ですが・・・・

 

≪    奇想画その 15:オイデープス王

幡枝の圓通 寺:2010    ≫

2010年5月30日 (日)

奇想画その15:オイデープス王

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古代ギリシャと言えば都市国家の集合体を想起します。 
中で一番有名なのが現代でも首都であるアテネ、古代ではそれに対するペロポンネソス半島のスパルタなどがありますが、神話ではアテネの西北の方にあったテーバイの物語が多く伝わります。
浮気者の大神ゼウスによる美少女エウローペ(=ヨーロッパの語源)の誘拐の結果、クレタ島の迷宮の王ミーノースなどが生まれるのですが、彼女の行方を探す兄弟たちが放浪の果てに築いた都がテーバイでした。 
その後多くの権力の交替があり、それに伴う物語が生まれます。
その中にはゼウスの血を引くアンピーオーンの后ニオベーが多くの子を設けて、「男女一人宛しか子が居ないレートー神よりも優る」 と自慢したのが災いし、子供たちはアポローンとアルテミスの遠矢に掛けられて葬られた、と云う、多くの古典彫刻のテーマになった物語もありました。
実は此処まで書いて、仕舞った!と思うことが出てきました。 
その”ニオベーの子達”の彫刻の写真がありません。 旅の何カ所かで撮ったのが悉く失敗して、従ってこのCapriccioシリーズに最適な画題の作品は無いのです。
さて、アンピーオーン等によって滅ぼされた先代の王に追放されていた其のまた前の王の子であるラーイオスが、彼らの死後テーバイの王となり、イオカステーと結婚します。
ところが彼はアポローンから 「もし子を設ければ、其の子は父を殺し母と結ばれるであろう」 という神託を受けていました。 浪々中に行った悪事の報いなのでした。
日頃は用心して慎んでいた彼ですが、ある時酒に酔って男の子が出来てしまい、しかたなく其の子を殺すように命じます。 
しかし王妃イオカステーの手で秘かに捨てらた其の子は、偶然にも隣国コリントスの王ポリュポスとその后メロペーに拾われてオイデープスと名付けられ、逞しく成長して立派な若者になります。
その彼がある時デルホイに詣で、アポローン神殿で、「国に帰ってはならぬ、 帰れば父を殺し母と結婚することになろう」 と言う神託を受けることになったのです。

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エディプスコンプレックスと言う言葉があります。 
男の子が発育していく上で一般に持つ感情~内面~自我としてフロイドが提唱したものですが、私が解説す るには手に余るので エディプスコンプレックス - Wikipedia  をご参照くださるようにお願いします。
此処には 次の 奇想画その16 で予定して いるテーマと同じ題材の画像も載っていますのでご覧下さい。
オイデープス=エディプスの物語はこのように後世の芸術にも多くの影響を与えたのですが、なかでもギュスターフ、モローの手になるこの作品などは、如何にも彼の好みそうな題材でもあり、それだけ に感銘深いものとなっています。
私も大変惹かれるのですが、さいわい材料が揃いましたので、二編に渡って此のシリーズで表現する事にいたします。

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オイデープス像はアクロポリス博物館の有名なクーロス像、アクロポリスの半地下にある展示場のものです。 
眼球は失われていますが、その点では此の物語りにぴったりという訳です。
背景はローマのフォロ・ロマーノ。 
入り口近くにあるアントニヌスとファウスティーナ神殿の根っこの辺りです。 
但しこの神殿名には、はっきりした記憶がなく、今グーグルアースで現地に舞い降りて、此処だ、と決め込んだものですから、間違いの可能性は残ります。 
その節はご容赦ください。

 

≪    とりあえず、 長谷川等伯展/京都国立博物館その4

奇想画その16:スフインクスの謎掛け    ≫

2009年7月 5日 (日)

奇想画その14:迷宮のテーセウス

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ギリシャ神話に出てくる英雄達の中で、最もポピュラーで活躍するのはヘラクレスでしょうし、ペルセウスなども有名です。 その他大きな物語としてはイーアーソーンを首領とするアルゴー号の物語、いわゆるアルゴーノウタイ(アルゴーの乗組員達、の意)などもあって、此の一員にヘラクレスも加わっていたりするのですが、此のテーセウスの場合はそれほど有名ではありません。
しかしながらギリシャの英雄達の中で、彼ほど”現世”に繋がっているいる者は居ないでしょう。
それは彼が全ギリシャ都市国家連合の雄、ギリシャ文明の花であり、中心であり、現代の首都でもあるアテネの建国者とされているからです。
彼は古いアテーナイの王アイゲウスの息子で、子を授かるためにデルフイの神託を伺いに行った帰り道隣国の王の娘との間に生まれた。 と言われますが、実は父親は海神ポセイドーンであるともされています。
大きくなったテーセウスは、母から父の名をあかされて、証拠の剣と鞋を得、途中多くの功業を上げながらアテーナイに向かいます。
その頃アテーナイはクレタ島の王ミーノースの侵略を受け、アイゲウス王は九年目毎に七人の少年と少女を貢ぎ物として贈ることで和議を結んでいました。
貢ぎ物の少年少女はクレタ島のラピュリントス(迷宮)に閉じこめられて、そこに住む怪牛ミーノータウロスの餌食にされた、と言われています。
彼は貢ぎ物の一人となってクレタ島へ向かい、その船出の時にもし成功したら白い帆をあげ、失敗したら黒い帆を揚げて帰航すると約束します。
貢ぎ物として迷宮に入ったテーセウスはミーノータウロスと遭遇して此を倒し、入り口から結んで置いた糸を便りに迷宮を脱出して、無事帰国するのですが、どうしたことか、白い帆を上げることを忘れていました。
絶望した王は崖から落ちて死に、テーセウスがアテネの王となります。
彼はアッティケー地方の王として中央集権的な国政を敷き、今日に至るアテネの建国者、創始者として今に伝えられるようになりました。

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クレタ島はギリシャ本土より先進的な文明を持っていたようで、此はエジプトなどにも近いと言うことがあったのでしょうか。
兎も角現在も遺跡が残るクノッソスのラピリンスは、如何にも海洋国家らしい~と言うことはギリシャとも共通する花やかで高度な文明があったことを示しています。
ギリシャでは後に主邑となるアテネが属国扱いであった、と言う時期もあったのでしょう。 
そしてそれから脱却して、後の強固な都市国家への道を開いていった、と言うのがテーセウスの功業であるとすれば、此のお話は他のいわゆるギリシャ神話とは少し趣が違って見えるように感じるのですが。

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迷宮の建物らしき石積みは、アテネはアクロポリスの丘、パルテノンなどが聳える頂上に至る登り道に建つ、此の一画の正門であるプロピュライアの遺跡です。
テーセウスの立ち姿は、パリのオルセーで見たフランス近代彫刻だった、と思うのですが、どうもこの辺り最近怪しくなっています。 きっとアルツハイマーの初期なんでしょう。
それは兎も角、当シリ-ズのモチーフは背景人物とも、すべて作者の勝手なイメージによる恣意的なものですから、もし雰囲気が妥当であれば良しとして下さいませ。

もう一つ、少し見え難いのですが(ある程度意識してそうしてはいます) 右の端っこに牛が顔を出しています。 勿論ミーノータウロスなんですが、正体は天神さんの参道に居るウシさんの彫像です。


2009年2月 3日 (火)

奇想画その14:英雄ヘラクレス

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ギリシャ神話の英雄伝説の第一人者というか、一番名が知られているのはヘラクレスでしょうか。
彼の父母はともにペルセウスの孫に当たるのですが、例によってゼウスが母親のアルクメーネーを見染めて、彼女は双子を生みます。
即ち神の胤であるヘラクレスと、人間であるイーピクレスです。
ただこれまた例によってヘラが嫉妬して、嬰児のヘラクレスの揺り篭に二匹の蛇を投げ込んだりしましたが、忽ち絞め殺されてしまいます。
このようにして成人していった彼は、獅子の皮を纏い棍棒を持った姿で現される無双の勇士になるのですが、ほかのギリシャ英雄と些か違うのは、力が強すぎ、気が短く、大食漢で色好み、それらによる失敗の多いこと、つまりはより人間的庶民的なことで、これが彼の人気の秘密なのでしょう。
ヘラによって狂気を与えられたヘラクレスは、恩人や妻子を殺してしまい、贖罪の旅に出ます。
このなかで行われる”十二の功業”というのが彼の物語の中核で、ヘラスの世界の果てから瞑府迄往来して活躍するのですが、長くなるので止めておきましょう。
(実はあんまり面白い話は無いこともあって・・・)
さてそのほかのあちこちで武勇伝を拡げて、なんども結婚し、数多の怪物や悪人(時には誤って善人も)殺し、城市を攻め滅ぼし、また気が触れたりした挙げ句、かつて殺したケンタウロスの呪いによって全身が爛れて死ぬことになるのです。
其の苦しみから逃れるために彼の肉体は焼き滅ぼされ、残った神から受け継いだものは天上に昇って青春の女神へーべーを娶り、其の母であるヘラとも仲直りし、天界に住むようになった、と言うことです。

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Web_dsc8018_2 ヘラクレスというのは勿論巨大な体躯のマッチョマンで、無双の怪力の持ち主ですが、其のキャラクターはギリシャ民衆の中での物語として留まらず、実はヘラスの世界を離れて遥かに遠く迄拡散していきました。
それは東へ東へと進み、中東からアフガニスタン、インドへと伝わっていき、力と外観の根幹は残したまま、全く違う存在となっていきました。
そしてついに海を渡り、我が国にまで到来したのです。
其の姿は現実に目にすることが出来ます。
奈良東大寺三月堂、執金剛神像。 (しゅこんごうしん)
此の一年に一度(12/16)しか見ることが出来ない天平の秘仏、超一級の国宝塑像。
武器として執る金剛杵は即ち棍棒、仏教の守護神として立つヘラクレスの変貌した姿です。

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写真ですが、実はヘラクレスではありません。
ローマ時代のレスリング・・・の彫刻だと思います。 つまりその程度に撮影者自身がきちんと見ていなかったもので、撮ったのはルーブルだったか、ヴァチカンだったか・・・と言う程度の好い加減さです。
背景の方ははっきりしていて、ギリシャはデルフォイのアポロ神域。  
ヘラクレスも神託を伺いに訪れた聖なる場所ですが、その辺りにぱらぱらと生えている緑の樹木の様相で、背後のパルナッソスの山塊に至るまで殆ど此のような剥き出しの岩山が続いていて、その上に多数の遺跡が存在しています。


 

2008年6月22日 (日)

奇想画その13:アンドロメデの危難


Andoromede :

Andoromede

首尾良くメドーサの首を取ったペルセウスは、帰り道にエチオピアの上空を通り掛かったのです。
その時ふと下を見ると、波打ち際の岩の上に美女が横たえられている。
何事かと飛び降りたペルセウスが知った事実は、彼女は此の地の王ケーペウスの娘でアンドロメデと言い、王妃カシオペイアが器量自慢をして「海に棲むネーレイデスの誰一人として自分に優るものはないだろう」と言ったことから、海神ポセイドーンの怒りを買って国中が洪水となり、又海に棲む怪獣が襲って来て暴れ回ると言う事態になった。
神託を伺うと王女アンドロメデを人身御供として、その怪獣の餌食にする他に此の災難を避ける方法はない、と言うお告げであった、ということです。
ペルセウスは奮い立って怪物が現れるのを待ち、格闘してこれを倒し、メドーサの首を突きつけて石にしてしまいます。
かくしてアンドロメデと結婚した彼は、生まれた子を此の地の跡継ぎに残し、妻の手を取ってセーリポス島に帰ってきました。
丁度その頃ポリヂュクテース王の横暴はその極に達して、母のダナエーと彼を庇護するディクテュスはゼウスの神殿に逃げ込んで、王は二人を兵糧攻めにしているところでした。
怒ったペルセウスは此処でもメドゥーサの首を出して、彼らを石にしてしまいます。
そして神々からの借り物を返し、母と妻を伴って故郷のアルゴスへ帰ろうとします。
その噂を聞いた祖父アクリシオス王は、予言を恐れて身を隠してしまいました。
一方ペルセウスは旅の途中で立ち寄った地で行われていた運動競技会を見て、五種競技に参加します。
ところが彼の投げた円盤が群衆の中に飛び込んで、一人の老人の頭に当たり、ついに死に至らしめます。
こうした偶然で神託は実現してしまったのです。
彼はアルゴスに帰らず別の土地に居着き、そこで多くの子孫を残しました。
その曾孫の中にギリシャ第一の豪傑ヘラクレスが生まれました。

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アンドロメダ〜夜空の星座はギリシャ神話から取られたネーミングが多いですが、アンドロメダ座もその一つ。
此の星座が何よりも気を曳くのは、かのアンドロメダ大星雲の存在でしょう。 
我々が属する天の川銀河の一番近くにある、同じようななりたちの銀河系。
230萬光年の彼方にある直径13萬光年の星星の渦巻き、
中央には二つのブラックホールがあって、秒速300kmで我々の銀河に接近し30億年後には衝突合体するであろう。
天文学やSFファンならずともロマンが駆けめぐります。
その名の謂われは此処にあったのですが、ペルセウス、王妃カシオペイア、王ケフェウスは勿論のこと、退治された筈の海の怪物も鯨座として天上に名を連ねています。

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横たわる美女の彫像はパリのオルセー美術館二階、王朝時代の宮廷を模した?展示室に飾られた官能的な作品の一つです。
背景は別に何処でも良いようなものですが、インドネシアの海。
富士山形の山が見える辺りが、あの火山列島の特徴でしょう。
そして上空に現れた怪物は、ギリシャのグリフインで、何処で写したのか忘れましたが何かの断片だったと思います。
そして色々の色の渦巻きなどの扱いがこのCapriccioシリーズの真骨頂ですが、どうやって創り出すのかは一寸した企業秘密です。
但し、お断りしておきますが、全て被写体が実在していて、そのデータを変化変形させて行ったもので、”手”で描き出した要素は一切ありませんので念のため。

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2008年6月21日 (土)

奇想画その12:ゴルゴーンのメドゥーサ

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Medusa

ゴルゴーンというのはゼウスなどオリンポスの神々の前の支配者、タイターンの時代の神、海ポントスと大地ゲーの間に生まれた一族のなれの果てで、昼と夜とが境を接する極洋の果、ヘスペリデスの園に住まう三姉妹のことです。
彼女たちの髪は悉く蛇で、その顔を見た者は石と化してしまうと言う怪物でした。
そしてその居場所を知っているのは、グライアイと言う老婆の精で、此の妖女も三人姉妹,しかも三人で一つの目と歯しか持っていないので、それを交替に使っているという魔女でした。
ペルセウスが例え話として言ってしまい、王がそれを取り上げて実行するように命じたのには、こうした背景があるのです。
もちろん如何に英雄の素質を持っているとはいえ、只の若者であるペルセウスには難題で、待つものは死のみ、
但しこう言う時にこういう若者を援助してくれるのが、かの知恵の女神、アテナです。
彼女が作戦を立て、お使い神であり泥棒の守り神でもあるヘルメスが彼の飛行靴と隠れ兜を貸してくれ、又ニンフの一人が首を入れる袋を貸してくれました。
アテナの知恵を授かったペルセウスはグライアイの所に行き、目を手渡そうとしている時にそれを横取りして彼女たちを困らせて、ゴルゴーンの住処を教わります。
ペルセウスはゴルゴーンの所へ行き、眠っているところで末の妹のメドゥーサを狙います。
と言うのも姉の二人は不死身だからです。
しかしまともに見たら石になってしまうので、アテナの輝く盾を借りてそこに写った映像を見て首を落とし、直ぐに袋の中へしまいます。
姉たちが異変に気がつきましたが、隠れ兜で身を隠しているので見つからず、飛行靴の力で逃れることが出来ました。
以下次項。

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アテナの光り輝く磨き上げられた青銅の盾には、その中央に蛇の髪を振り乱したメドウーサの首が着けられています。
これはペルセウスが盾を返すときに感謝の意を籠めて捧げたもので、アテナの盾を見せられた敵はやはり石と化してしまうわけです。
と言う因縁を絵の左寄り、階段の下の所に置いておきました。

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彫像はギリシャ彫刻のローマ時代模刻の一つ、確かルーブルでした。
頭部や四肢の欠けたトルソだけのアフロデイテ像などは沢山残っていますから、それを以てゴルゴーンとするのはこじつけもいいところですが、何しろCapriccio 奇想画ですので、ご容赦の程を。
それと盾ですが、これはギリシャ土産に買ったアテナ・パルテノスのミニチュア彫像(ペンテリコンの石です?)のものです。
背景は20世紀初頭の名作、E,Gアスプルンド設計のストックホルム市庁舎青の広間。
ノーベル賞受賞者を祝う晩餐会会場として使われる素晴らしい広間です。

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2008年6月13日 (金)

奇想画その11:英雄ペルセウス

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Perseus

神様が少し続きましたが、今度は英雄譚です。
ギリシャの英雄はまことにその文字に相応しいスーパーマン揃いですが、概ねは神と人の間の子、神人が多いのです。
このペルセウスも又アルゴスの王アクリシオスの子、ダナエーと、大神ゼウスの間に生まれた子でした。
アクリシオスにはダナエーの他に子がなかったので、神託を伺ったところ、ダナエーには息子が生まれ、その子は将来祖父を殺すだろう、とありました。
同じような話は他にもあって、一番有名なのはオイデープスの物語り、フロイドの言うエディプスコンプレックスの象徴となる物語ですが、これはまた後程。
さて、神託を恐れたアクリシオスは青銅の密室を作ってダナエーを閉じこめます。
処が例の浮気者のチャンピオン、大神ゼウスがこれを認めて、黄金の雨と化して近づき、ダナエーは身籠もります。
生まれた子がペルセウス。
アクリシオスは二人を箱に閉じこめて海に流し、箱はセーリポス島の王ポリュデクテースの弟デクテュスに拾われて、ペルセウスは此処で成人します。
成人したペルセウスを煙たく思った王は、ある時島の主だった人々に贈り物として馬を求めました。
かかりうどの若者であるペルセウスは応じることが出来ず、自分の腕で取れるものなら例えゴルゴーンの首でも取ってきて差し上げるけれど、馬は勘弁して下さい、と言いました。
王はペルセウスを除く口実を探していたので喜んで、是非そうして貰いたい、と命じます。
(以下次項)

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此のお話には怪物ゴルゴーンが絡み、ペルセウスを助けるアテナ女神とお使い神ヘルメスが絡み、首尾良く帰る途中美女アンドロメーデの危難を救い、子孫にヘラクレスを残す、と言った具合に多くの説話に絡んでいきます。
此の綺想画シリーズは背景と彫像の組み合わせを楽しんで頂く映像作品で、たまたまギリシャ神話を借用したものですから、お話として続くようなことは心懸けていません。
ただこの場合は以上のようにペルセウス氏があちこち飛び回った御蔭で三つばかりお話を(少しこじつけもありますが)続けることが出来そうです。

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背景ですが、ローマのホロ・ロマーノ。
実は後ろの方に後代の建物が幾らか見え隠れしているのですが、真っ黒けに近いので気にしないで下さい。
彫像はヴァチカン美術館の八角の中庭、カノーヴァのコーナーにある”勝ち誇るペルセウス”
ヘルメスの隠れ兜を被り、片手にゴルゴーン〜この場合は三人姉妹の怪物の末のメドゥーサの首を掲げている所です。
アントニオ・カノーヴァ(1757~1822)はイタリアの彫刻家で、新古典主義の代表的作家です。

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2008年1月19日 (土)

奇想画その10:神々をも恐れさせるエロース

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Eros

此の神ほどギリシャとローマ、そして時代が下がってキリスト教と、イメージが変わる神はないでしょう。
ギリシャでは青年に近い姿の十五六歳の少年で表現され、ローマではやや年が下がっていき、写真の像は丁度その中間くらいでしょうか。
それがキリスト教の世界では幼児になる。
背中に生えた翼という属性だけが共通していて、元はギリシャ神話のエロースでも実体は全く変わってしまいます。
エロース、クピードー、キューピッド、言い方は違っても、いずれにも”愛”と言う概念が付いて回りますが、その中味も全く変質します。
キリスト教の宗教画に出てくる愛くるしい天使達、キュウピイさんがあどけなく表しているのは天上の愛でしょうが、今此処で取り上げるEros神は全く違います。
それは神々の中でもっとっも恐ろしく力あるもの、大神ゼウスでさえも恐れさせるもの、と言う存在なのです。
すなわち
”あらゆる神々、あらゆる人間の胸の内にある理性と思慮とを失わせるもの”
恋、愛、性を支配する神なのだからです。
彼が何時も携えている黄金の弓矢、その鏃の先に掛けられたものは、神と言わず人と言わず己を失って狂う。
それは時には誤って自身の肌を傷つけ、彼自身を狂わせてしまう事もある、恐るべきものなのでした。
そしてもうひとつ持っている鉛の鏃で射られたものは、何者も疎ましくなって避けるようになる。
かつてアポローンはダフネーと言う乙女に恋をしましたが、自分の弓矢を自慢してエロースをからかったばかりに、此の二つの鏃を使い分けられて、ひどい目に遭いました。

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エロース(直接的に愛、性愛を意味する単語のようです)と言うのは神格というよりも概念をあらわしたものでしょう。
人の心の最も基層にあるものだけに、ギリシャ神話の原初から存在したようですが、オリンポスの神々の系譜では一般に美神アフロディティーの息子と言うことになっています。
その流れの中で多くの神話が生まれ、また説話、戯曲、或いは絵画彫刻と言った形でも多くの作品を生むことになります。
なおローマでのクピードーという呼び名、単語は”欲望”という意味だと言うことです。

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写真の背景はストックホルムの校外、市営墓地公園の一画です。
ただ芝生の広場〜小山が広がっていましたが、将来の拡張用地なのでしょうか。
この場所は当作品に再々登場しますが、スエーデンの大建築家、E,G,アスプルンドの代表作品の一つです。
恐らく此の盛り上がりも木立も、彼のフイルターに掛けられて成立している光景なのでしょう。
彫刻の方はルーブルにあった、蝶々を苛めるエロス、ルーブルのカタログでの作品名は”キューピッド”なのですが、この時代、場所での正しい呼び方はエロースでもなく、アモールと言うことになるのでしょうかね。
19世紀初頭フランスの古典主義彫刻、A、D、ショーデの作です。

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2007年9月12日 (水)

奇想画その9:太陽神ヘーリオス

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<Helios>

前回アポローンだったので、つれてヘーリオスの登場です。
この神様はゼウスを初めとするオリンポスの神々に先立つ巨人族ティーターン、英語で言うタイタンの一統とされ、彼自身の異名もティーターンです。
妹が二人居て、セーレネー、エーオースと言い、これは月、及び暁の女神を意味します。
太陽神ヘーリオスは火炎に包まれた四頭立ての馬車〜すなわち日輪〜を駆って、夜明けの暁に続いて東の空を駈け昇ります。
そして一日の運行が終わると西の大洋に没し、黄金の杯に乗って東の海に帰る、とされています。
如何にも海洋国ギリシャらしい発想ですね。
一方妹のエーオースはサフラン色の衣を纏い、二頭立の馬車を駆って紫の門を駆け上がる、と形容されていますが、その子に風の神達が居て、優しい西風ゼピュロス、荒々しい北風ボレアースなどがそれにあたります。
ところでこのエーオースEosと言う綴り、よく見かけませんか?
特に写真をやる人なら。

彼に関しては、息子のパエトーン(神様の通例としてよそに設けた子です)が初めて会いに来て、喜んだヘーリオスが親子の名乗りをし、何でも希望を叶えてやろう、と言ったことから、少年が一日だけ彼の馬車に乗りたいと言い出し、
「この馬車を御せる者は私以外は神々にも居ないのだ」
と言う父親の制止を振り切って走らせて、世界中に火炎と焦熱の災厄を振りまいた挙げ句、自分も焼け死んでしまう、と言う物語があります。
エチオピア人の肌が黒いのはこの時焦げたからで、リビア砂漠が出来たのもそのせいだ、と言うことです。
神様と言うのは難儀なもので、一度約束したことは破れないので、こういった悲劇が起こります。

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今回の絵は少し今までのと違います。
このシリーズは4年ほど掛けて作ったので、その時々の気分で少しずつ作り方が変わって居ます。
単純な構成ですが、太陽神には適当かな、と思って作ったのですが、この文章を書く為に、私のタネ本呉茂一著ギリシャ神話を見ていたら、
>文学や絵画では日輪の炎を頭上に頂く姿でも現されている<と言う記載がありました。
私はそうした実例を見たことがないのですが、さてはこれで正解か、と、今少し気をよくしている次第です。

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背景ですが、まさしく東の海の上に昇る日輪です。
撮ったのはインドネシアの領海ですが、どこで撮ってもこれは同じですね。
彫刻の方はバチカン美術館にあったローマ時代のもので、実在の人物像。
ローマ全盛期五賢帝の一人ハドリアヌスの寵童アンチノウスです。
彼は帝国内を巡遊する帝に従ってナイル川で水死しますが、其の死を悼んだ帝はその地に都市を建設し、神格に列しました。
それでこの美少年に関しては実に多くの彫像が残されています。

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お礼: ご覧の皆様有り難うございます。
おかげさまで、この頁でアップ数1000となりました。
また本日(9/12am7.28)のところ
ご来訪183049人、アクセス430918件頂いております。

2007年9月 1日 (土)

奇想画その8:青年神アポローン

Web3014apollon1

<Apollon>

アポローン。
よく太陽神と言いますが、ギリシャ神話の太陽の神は別に居て、
Helios ヘーリオスといい、四頭立の馬車に乗って天空を東から西へ駆け抜けていく、とされています。
アポローンには多くの属性があり、その内には光明神と言う面があって、ローマ時代になってからその面が強調されたのでしょう。
ではアポローンとは何ものか、
これはズバリ青年の神、若く美しく伸びやかな姿態と、男らしい風貌は、即ち人類史の青年時代であるギリシャそのものとも言えるものでしょう。
この若さと未来への賛歌は、此の時代のどの彫刻を見ても、共通して表現されているところです。
では彼の守備範囲は何か、と云うと第一は銀弓神の異名の通り、弓矢を持って山野を駆けめぐる、狩り、牧畜そして青年そのものの守り神で、その挿話として多くの変身譜に関係します。
月桂冠になった処女ダフネ、糸杉の青年キュパリソッス、そしてヒヤシンスの花と化した美少年ヒアキントスなどの物語が生まれました。
もう一つ、最も人々から重視され信仰されたのが、予言の力でした。
現在のギリシャ観光でも定番のデルホイは、此の神の多くの神殿のなかでも最も大切なもので、個人から国家の運命に至るまで、全ギリシャから此処に詣でて神託を受けるところであったのです。
そしてこの地では四年毎にビューティア祭と呼ばれる大祭があって、これはオリンピック競技同様、全ギリシャから集まった芸能、文芸の名手が技を競うものでした。
即ち彼はこういった方面の守護神でもあったのです。

          ーーーーーーーーーーーーーーーー

此の神の父は大神ゼウス、レートーと云うオリンポス以前の神が母で、妹アルテミスと共にロードス島で生まれました。
嫉妬深い女王ヘラの差し金で、どこの地も子を産む場所を提供しなかったのに、此の島だけが引受けたので、自今此処はデルホイとともにアポローンの聖地となりました。
アルテミスはローマ風では月の女神ですが、アポローンと対になる青春期の女性を代弁する神でしょう。
此の二神はオリンポスのなかでもランクは上の方ですが、これはその出自よりもその性質、つまり若々しく未来に満ちたギリシャそのものの象徴であったからではないでしょうか。

          〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

写真の背景はストックホルム市庁舎の湖に面したピロテイです。
20世紀初頭の大建築家エリック、グンナル、アスプルンド設計の名建築、
その青の広間はノーベル賞授賞式晩餐会で有名です。
彫像はルーブルにあったもので、ローマ時代の模刻でしょう。
手足が欠損していますが、まことにアポローンらしい凛々しい彫像です。
実はライティングの方向が背景と逆だったので裏返しにして、ついでに台座と支柱は外しました。
影も彫像から作り出したので正確です。
(ただ影の方は台座がくっついた状態のままなのですが・・・、)

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2007年7月11日 (水)

奇想画その7:蜘蛛

Webarachne1_3

<Arachne>

アラクネー。
小アジアの西の海岸に住んでいた、美しい少女の名前です。

彼女は母親を早く亡くしましたが、機織りが好きだったので、父親は高価な帝王紫の糸を与えて織らせていました。
彼女の技量はぐんぐんと上達して、並ぶ者もない上手になってきました。
人々は勿論、ニンフ達までもその技を見に集まってきて、見事な織物の出来映えを見て溜息を吐くのでした。
誰云うともなく
「このような技は、きっと女神アテネが自ら授けられたものに違いない」
と、評判になったのです。
彼女はそれに対して
「いいえ、そんなことはありません。
私の技は私自身が研鑽してこうなったもので、例え女神様が技比べを挑んでこられても、決した負けるものではありません」
と答えました。
女神はそれを聞かれて老婆に姿を変え、杖をつき蹌踉めきながらアラクネーのもとへと出向かれた。
「娘さん、年寄りの云うことをよくお聞き、
貴方の腕前はそれは誰にも負けないものだけれど、自慢するのは人間の間でのことにして、神様を引き合いに出してはいけない。
神様には早く謝って、お許しを願うのがいいよ」
と言いました。
アラクネーは
「お婆さんは耄碌したのね、
そんなことは自分の孫か何かに云ったらいいでしょう。
私のことなら、ほんとに女神様を呼んできたらいい、
技比べをしたらどちらが上手か、直ぐに判ることだから」

女神は直ちに姿を現された。
周りにいた人もニンフも、皆ひれ伏して崇めたが、
アラクネーはそのまま座って、固い決意を示していたのです。

競技は始まりました。
アテナ、全ての知恵とそれに支えられる技芸の保護者である女神の織り出したものは、オリンポスの神々の姿で、
中でも女神自身が海神ポセイドーンとアテネの町を争った物語では、ポセイドーンの三叉の鉾に貫かれた巌から清冽な泉が迸り出、アテナ女神の槍で突かれた大地からは緑滴るオリーブの木が生えて出る様を描き出していた。
対するアラクネーの布は、神々と人間の物語り、つまり神々の浮気の物語りで彩られている。
即ち白鳥と化してレダを犯すゼウスの姿や、ポセイドーンが未だ若く美しかったメドーサを誘惑するシーン等々で、これらがぎっしりと花模様で覆われ、そこに常春藤の葉が絡まっている。
正直なところ甲乙つけがたい出来だったので、
女神の怒りはかえって凄まじく、アラクネーの布を引き裂いて、手に持った梭で彼女を打ち据えられた。
アラクネーはその恥辱にたえられず自ら首を吊ったが、さすがに哀れを催した女神は
「命は助けよう、でも神々をないがしろにする者はこうした運命を受けるのだよ」
と言って、立ち去りながら草の汁をかけられた。
かけられたアラクネーは見る見る小さくなって、八本の足で木の枝から下がるようになった。
今でも彼女は細い糸を織って、毎朝美しい露の玉を掛けている。
つまり彼女がアラクネー(ギリシャ語で蜘蛛)なのだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

変身譜、と言うのがギリシャ神話の一ジャンルを占めています。
現在の何々は、実はこういう謂われで在るのだ、と言う話で、随分こじつけも多いですが、概ねは神様の浮気、身勝手で被害者は人間です。
このシリーズなんかにはもってこいのテーマなんですが、あり合わせのネタで構成している関係上、思うようにはなりません。
アテナは流石こういった理不尽の話は少なくて、たまたまあったので載せた次第です。

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背景の軒先は、ストックホルム市の斎場で、焼場の建物の軒になりますが、別に意味はなく、たまたまの利用です。
彫像の方はパリのオルせーにあったもので、確かめてはいませんが糸巻きを持った姿は間違いなくアラクネーそのものがテーマでしょう。
蜘蛛の糸は本物で、
よくご覧頂くとひっかかった獲物が居て、
これはルーブルで見たエロスです。

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2007年7月 6日 (金)

奇想画その6:女神アテナ

Web3017athena1

<Athena>

英知の守護神アテナ。
一般に戦の女神としても知られていて、この像も兜を被っていますが、オリンポスの12神の中にはもう一人、アレースと言う戦の神も居ます。
じつはこの二神の責任分担点ははっきりしたもので、アレースは戦術、アテナは戦略。
つまりアレースは戦闘と武技の専門家で、前線で取っ組み合いをする神様。
アテナの方は参謀本部で作戦を立案指揮する神様。
と、少なくとも私は割り切っています。
従ってアテナの管轄するのは、将に 如何なる事態に対しても過たぬ英知、であって、これは若いパリスを誘惑するには少し高尚すぎる贈り物だった、と言うことでしょう。
ギリシャの神々は不老不死以外は人間と全く同じ挙動をする方々で、管轄、縄張りがはっきりしています。
その点は我が日本神話と同様で、親近性があり納得がいくところです。

この”電気紙芝居”シリーズも手当たり次第に神様を俎上にあげますが、第一陣はオデッセウスの流れもあって、この神様です。
つまりギリシャ軍第一の知将、”知謀に長けた”オデッセウスは何にも増して此の神の”お気に入り”なのでした。
そして実は当ブログの親方でもありまして・・・(村の森の)梟は、何を隠そう、この神様のお使いなのです。

     ーーーーーーーーーーーーーーーーー

ギリシャ神話というのは色々な時代、色々な地方のお話が絡み合っていて、どれが本筋とも言えないところがありますが、
アテナは天上(と地上)神の序列で第三位、つまり主神ゼウス、その妻ヘーラーに次ぐ地位の神様です。
彼女は大神ゼウスの頭から生まれた、つまり処女受胎の上を行く神様で、生まれたとき既に甲冑を身につけ、槍と盾を持っていた、といわれています。
そして清らかな天空、或いは稲光を象徴し、都市の守り神でもあり、その中でも最も有名なのが、その名を頂く都市国家アテネであるわけです。

     〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

背景はウイーンの美術史博物館ホール、またもや、ギリシャにドームは無い! とお叱りを受けるご都合主義です。
神像はルーブルにあるローマ時代の模刻で・・
元の名前がどうしても出てきません!
そして手にはお決まりの眷属、勝利の女神ニケを翳していますが、こちらの方はかの有名なルーブルにある、サモトラケのニケ、そのものです。

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2007年3月27日 (火)

奇想画その5:カサンドラの予言

Webkassandorablog061227sw0

<Kassandora>

トロイの王女カサンドラ。
トロイ戦争の一方の旗頭である、イーリオスの首都トロイの老王プリアモスの娘です。

”彼女の誇らかに透徹して、冷ややかな輝きを帯びる白玉のような美しさ”*1 は、銀弓の青年神アポローンの愛で給う処となり、其の証として予言の力を授かりました。
アポローンの神殿の巫女として、先々のことに関して過たない託宣を行うことが出来るようになったのです。

処が二人の間に何があったのか、確実に言えることは、彼女はアポローンを”袖に”したのです。
振られたアポローン神は、腹立ち紛れに授けた予言の力を取り上げようとします。
でも神様にも不自由なところがあって、
一旦授けたものを取り返したり、取り消したりすると言うことは出来ないのでした。〜〜神様だからです。

そこで考えたアポローンの策略は、もう一つの能力、と言うか、運命を彼女に付与することでした。

即ち彼女の予言は常に全く正しいのですが、誰もそれを信じることはない、と言う運命を与えられてしまったのです。

弟のパリスが生まれた時、彼女は彼による将来の悲劇を予言したのですが、誰も耳を貸しませんでした。

そして、其の運命の時が来て、ギリシャの智将オデッセウスが仕掛けた木馬の謀り事の場面となります。
巨大な木馬の体内に戦士を潜ませて放置し、陣営を焼き払ったギリシャ軍は、夜の内に全員が船に乗って立ち去ったのでした。

朝になってそれを見たトロイの人々は歓喜して、戦利品として木馬を城内に引き込もうとします。
先々が見えるカサンドラは、それを阻止しようとして皆を説得しますが、誰も言うことを聞きません。
またアポローンの神官ラオコーンは、「これはギリシャ軍の計略に違いない」と言い、搬入を留めようとしたのですが、この時に海から大蛇が現れ、彼と息子二人を絞め殺してしまいます。

かくして木馬は城壁の中に引き込まれ、トロイの人々は夜を徹した勝利の宴に耽ります。
そして皆が酔いつぶれてしまった時、木馬の腹が開いて斬込隊が現れ、いつの間にか海岸に戻ってきたギリシャ軍がなだれ込んできて、此の十年に及ぶ当時の世界大戦は終結したのでした。

カサンドラは戦利品として〜つまり奴隷として〜ギリシャ軍の総帥アガメムノーンに分配されました。
そして帰国したアガメムノーンが、留守の間に不倫をしていた妻クリュタイメーストーラーの手で謀殺された時、同時に儚くなったのでした。

*1:呉茂一著 ギリシャ神話上巻より

        ーーーーーーーーーーーーーーーー
此のお話には色々とギリシャらしいところがあります。

ギリシャの神様は色恋沙汰を含めて人間と全く同じですが、神様故に一度云ったこと、約束したことは取り消せない。
此の辺りのキャラクターが大変面白いところです。

”綸言汗の如し”と言う奴でしょうか。

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画面のカサンドラは、アクロポリス博物館にあるコレーの像で、背景の城壁は同じくアクロポリスの登り口、前門プロピライアを下の方から見上げた処になります。

どうでもいいことですが、炎は京都の鞍馬の火祭りからとって、馬のシルエットは東北の民具、”ちゃぐちゃぐ馬こ” という処です。
そんな種明かしは別として、アポローンを惑わす美貌でありながら、悲劇の主人公となった王女カサンドラのイメージとしては、果たしてどうでしょうか。

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2007年1月 5日 (金)

奇想画其の4:オデッセウスの航海

26silene

<Sirenses>

セイレーネス、
単純に読むと、”サイレン”(の女性複数形)
ご存じ、パトカーや救急車のあの 「ウ〜ウ〜」 の語源です。
これがライン川ではローレイライの伝承に変わる、美しい歌声で惑わして” 行き交う船人”を難破させる人魚のお話の大本です。


大叙事詩オデッセウスには様々な航海奇談が語られています。
通常私たちが認識する”オデッセイ”はそう言ったものですが、お話の筋書きはまさに”貞淑なペネローペア”と”オデッセウスの望郷”の物語りで、帰国途上の艱難や、航海での災厄などについては、その中の話中話の形で語られます。
アテナ女神の請願によって、ゼウスが彼をを閉じこめているニンフのカリプソーのもとから開放した後、一人海に出たオデッセウスの姿を見た海神ポセイドーンの怒りは未だに解けず、彼は難破してしまいます。
辿り着いたパイエーケス人の国では、その人並み優れた容姿、物腰から歓待を受けますが、やがて本当の名を名乗った彼は帰郷の旅の援助を乞い、これまでの航海の苦難を語ります。
此の部分が一般に”オデッセイの航海談”として知られるところです。
なかでも極ポピュラーなお話の一つが、此のセイレーネス=サイレン〜ライン川ではローレライになったお話でしょう。

原作のセイレーネスは人面獣身の怪物で、其の歌声を聞いた者は、故郷の妻子も帰郷の喜びも忘れて近づき、命を落とします。
それまで彼らを誘惑し拘束していた魔女キルケーが、オデッセウスが求めに応じて冥界まで使いした褒美に開放するに当たって、予言し教えてくれた数々の注意に従って、部下の耳を密蝋で塞ぎ、自分は厳重に帆柱に縛り付けられた形で通過に成功する、と云う訳で、小さな挿話の一つとして語られています。
未だ部下も船もある段階ですから、航海談の始めに近い部分です。

   −−−−−−−−−−−−−−−−−−

航海中の物語を一つ一つ追っかけられれば、幾らでもこのカテゴリを増殖できるのでしょうが、とりあえず手持ちの画はこれだけです。

原作はともかく、美しい人魚、と云うのがセイレーネス、のイメージで、南イタリアの景勝ボジターノ海岸にはレ・セレヌーセという名の世界的リゾートホテルが在りますが、シンボルマークはやはり人魚です。
でも、魔物は魔物ですから、イメージとしては巨大化し、この絵では船を見下ろしています。
魅入られた船人は、其の歌声に抗すべくもなく、今や破滅への道を・・・

   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

彫刻はルーブルのフランス近代彫刻(だった、と思います)
風景は全く飛び離れて、インドネシアの領海、小スンダ列島の北側を航海しているときに見た小火山島です。
勿論名前はあるのでしょうが、知りようもありません。
そして航海の目的地は、コモド島、
世界最大の大蜥蜴
(チョクチョク人が食べられる・・半分嘘ですが)
に会いに行く旅の道すがらです。

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2006年11月27日 (月)

奇想画その3:貞淑なペネローペア

Webpeneropeia

<Peneropeia>

ギリシャの知恵を代表するオデッセウス。
トロイの戦争に勝って凱旋した諸将については、それぞれに物語があります。
スパルタ王メネラーオスは、此の戦のもとになった、世界一の美女ヘレナ〜美の女神アフロデイティーのお墨付き付き〜と元の鞘に収まりました。
そして彼の兄、ギリシャ軍の総帥アガメムノンには留守の間に浮気をした妻の裏切りと謀殺の運命が待っていました。
そして我がアテナの愛でたもうオデッセウスに関しては、海神ポセイドーンの怒りによる10年に及ぶ放浪の旅、ということになるのです。

此の委細についても多くの物語がありますが、
此処では故郷イタケーの島で待つ
オデッセウスの”貞淑な妻”、ペネローペアの物語です。

戦に10年、放浪の旅に10年、オデッセウスには多くの艱難と誘惑がありました。
しかし彼の望郷の思いは途切れることはありません。
故郷イタケーには新妻ペネローペアと赤子のテーレマコスが待っている。

そしてその通り、貞淑なペネローペアは待っていました。
今や成人したテーレマコスと共に。

ですが、20年も留守にし、戦が終わって10年経って、他の諸将は皆故郷に帰ったのに、未だに消息の無いオデッセウスを待つ彼女の身の回りには波風が絶えませんでした。

未だ若くて美貌の彼女とイタケーの王位を狙った野心家達が、廻りに蝟集していたのです。
彼らは次第に徒党を作り、王宮に我が物顔に出入りをし、オデッセウスの財産を浪費しました。
召使いの中には彼らに取り入る者も出る始末。
求婚者達の執拗な要求に、彼女は今織っている織物が出来上がったら、何方かに再婚しましょうと言い、そして織った織物を毎夜密かに解く、と言う作業を繰り返して逃れました。
そのことも裏切った召使いのせいで求婚者達に知れて、彼女は追いつめられます。

さて、オデッセウスですが、全ての部下を失ってニンフのカリプソの島に閉じこめられていましたが、オリンポスの神々の宴に出た彼の庇護者、知恵の女神アテナの訴えに動かされた大神ゼウスは、彼の運命を変える決定を申し渡します。
伝令神ヘルメースが島に赴いてカリプソにその命令を伝え、解放されたオデッセウスは故郷へと向かいます。

一方アテナはイタケーに行き、姿をやつしてテーレマコスに接触して、父の帰還を伝えて勇気を与え、身の処し方の知恵を授けます。

二十年ぶりに故郷に帰り、乞食に身をやつしたオデッセウスを、それと認識する者は居ませんでした。
ただ一匹、城門の前に蹲っていた老犬が彼の側に這い寄ってきて彼の手を嘗め、一声ワンと鳴いて息絶えます。
その昔、彼と共に山野を走り回った愛犬でした。

やがてアテナの力によってテーレマコスはその乞食が父であることを知り、二人で城内に入ります。

求婚者達に囲まれたペネローペアは織物の策略がばれて絶体絶命でしたが、ここでもアテナが知恵を授けます。
彼女は一張りの弓を取り出して、
「これはオデッセウスの使った弓ですが、弦が張ってありません。
これに弦を張った方に従いましょう」
と告げます。

あとはご説明するまでもなく、求婚者たちが張りあぐねたところに乞食が出てきて一息で弦を張り、求婚者の首謀者を一矢で射倒します。
以下テーレマコスともども大乱闘の末、”アテナ女神愛でたもう”オデッセウスは20年の歳月を経て、めでたく”貞淑な妻”ペネローペアの元に帰還を果たしたのです。 

メデタシ、メデタシ。


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

此のお話は大叙事詩オデッセイの最終部分ですが、多くは航海中の遍歴談、奇談が語られています。
一つくらいは当Capriccioでも取り上げられると思います。

”貞淑な”というフレーズはペネロペアの定冠詞みたいにくっついていて、ギリシャの人名などにはよくこういう言い方があります。
最たるものは”死すべき”人間、と言う言い方で、逆に言うとギリシャの神様は此の属性以外は人間と変わりない、と言うことでしょう。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

画面は求婚者達に取り囲まれたペネローペアのイメージですが、危害が加えられると云う描写は原作にはないので、その点はいい加減なものです。
メインの彫刻はフイレンツエの国立バルジェッロ美術館にあったルネッサンス彫刻で、回りにいるブロンズの戦士は、テルモピュライにあるスパルタ王レオニダスの像、つまり大昔のペルシャ侵入に対抗した英雄で、現代ギリシャの記念像です。
背景のアーチ(ギリシャにはアーチは無かった!などと云う話はこの際目を瞑って頂いて)フイレンツエのサンタマリアノベッラの緑の回廊です。
〔色遊びの対象ですから、本来の色とは無縁です。
そして現実の緑の回廊は、まさにその名のイメージ通りの素晴らしさで、是非ご覧になることをお奨めしたいものです。〕

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2006年10月11日 (水)

奇想画その2:オデッセウスの帰郷

42odysseus

<Odysseus>

トロイ戦争
此の10年に及ぶ、全ギリシャと小アジア(現在のトルコ)沿岸の都市国家トロイとの戦争は、
古典ギリシャの詩人ホメロースによって語られ、今日ではイーリアス、オデッセイの二大叙事詩として伝わっています。
イーリアスと言うのはトロイを含むこの地方全体を示すイーリオンという言葉からきていて、トロイ戦争そのものがテーマです。
登場人物とその次第を此処に紹介することは不可能です。
何しろ正真正銘の”大叙事詩”なのですから。
ただ此処で全ギリシャ(世界とその文明)を代表する二人の名をあげましょう。

勇者アキレウスと、智将オデッセウスです。

10年に渡る戦いの中では何度もの勝敗があり、幾つもの悲劇やエピソードが生まれましたが、その中ほどではアキレウスの活躍に依ってギリシャ軍が大勝利を得ます。
しかし不死身の彼は、その唯一の弱点アキレス腱を矢で射抜かれて倒れます。
かくして更に延長戦となった此の戦に最終的な決着を与えたのは、オデッセウスの知謀でした。
これが彼の有名なトロイの木馬戦術です。
木馬を残して撤退したギリシャの大船団を見て勝利の歓声を上げ、戦利品としてその木馬を城内に引き込んだのが致命的でした。
勝利の宴に皆酔い潰れた頃、その腹の中に潜んだギリシャの切り込み隊が姿を現したのです。

さて、本稿の主題ですが、実はトロイ戦争=イーリアスではありません。
凱歌を上げて国に帰るギリシャ軍諸将の中で、最大の功労者と言うべきオデッセウスが辿る悲劇、もう一つの叙事詩オデッセイがテーマです。

オデッセウスはギリシャの中でもトロイとは最も遠い、現在のアドリア海に近い島、イタケーの王でした。
そして他の諸将とともにイーリオンの岸を離れた彼の船団ですが、数多くの艱難にあって破滅し、オデッセウスただ一人が故郷に辿り着きます。
トロイを出て既に十年の歳月が経っていました。
この艱難の航海での出来事と20年を経て故郷に帰ったオデッセウスの物語が、叙事詩オデッセイなのです。
これも一々辿ることは不可能ですが、此の帰郷の旅の最初の段階で、ある島に寄ったとき、彼らは一つ目の巨人に襲われます。
オデッセウスの策略で一つしかない目を潰して脱出したのですが、これが彼らの災いの始まりでした。
此の巨人キュクロープスは大海原を支配する神ポセイドーンの息子だったのです。
遙かなイタケーの島を目指して航海する彼らには最悪の事態となり、次々に起こる災厄と運命の物語が此の叙事詩の前半となります。

   ーーーーーーーーーーーーーーーーー

画像のイメージは、
果てしない大海原を眺めながら、今までの災厄を振り返り、この先の艱難に想いをやるオデッセウスの姿・・・と言うところです。
彼は故郷イタケーの島に新妻ペネローペアと、生まれたばかりの長男テーレマコスを残して出征してきているのです。

最早20年が過ぎようとしているーーー
オデッセウスの望郷の念は、いかほどでしょうか。。

   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

彫刻はルーブルにあった、ローマ皇帝の像の一つを借用しました。
前面の暗い海と空は、ギリシャ本土とペロポンネソス半島の間にある細長い入り海で、この辺りから出航してイタケーの島の横を通り、長靴のかがとにあるバーリへと向かいました・・・と言うのは、オデッセウスの話ではなく、不肖私の旅のことでした。
何れにしても画像の素材にしたもので、現実とは一切関わりありません。


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2006年9月 1日 (金)

奇想画その1: パリスの審判

213gracees

<Paris>

トロイの王子パリスは、イーデーの山中で羊を牧していました。
そこへ大神ゼウスの指図に従った三人の女神が現れます。
ゼウスの后ヘーラー、知恵の女神アテナ、美の女神アフロディテーです。

これは次のような次第からでした。

天上の神々臨席のもと、人の子であるペーレウスと、ニンフのテティスの婚儀が華やかに行われていました。
ところがただ一人、争いの女神エリスだけが招待から漏れていたのです。
腹を立てた彼女は”一番美しい女神へ”と書いた、黄金のリンゴを宴席に投げ込みます。
「そのリンゴは私のもの」と、名乗り出たのが先ほどの三人だったのです。
ゼウスはその判定を美少年パリスに託したのですが、これらのことは全て増えすぎた人間を減らそうと企むゼウスの策略で、トロイ戦争への伏線だったのです。

さて、三人の女神は装いを凝らし、贈り物を持って別々にパリスの前に現れます。
最初はヘーラー。
女王の冠をつけた彼女は、「この世の全ての権勢を与える」と約束します。
次に現れたアテナは銀色に輝く鎧兜を身につけた完全武装の姿で、「いかなる場合にも過たぬ英知を授けよう」、と告げます。
最後に一糸纏わぬ姿で現れたアフロディテーは、「世界一の美女をあげる」と言いました。

若いパリスはアフロディテーの誘惑に負けて、黄金のリンゴを彼女に渡します。

問題はこの”世界一の美女”でした。
神様は嘘を吐きません。(ギリシャの神様は時々怪しくなりますが)。
スパルタ王メネラーオスの妻、ヘレナ。
アフロディテーの手引きで彼女を略奪し、トロイへ連れて帰ったのです。
こうしてメネラーオスの兄アガメムノンを総大将とする全ギリシャ軍10万と小アジアの都市トロイとの10年に及ぶ戦いが始まったのでした。

   −−−−−−−−−−−−−−−−−

写真について:
背景はストックホルムの市民墓地、彫像はルーブルにある三美神です。
彫刻そのものはこのお話と関係なく、作者の借用で、ついでにパリスは何処に居るかといえば、後ろの窓から覗いています。
要するにギリシャ神話にかこつけた色と形のファンタジイがこのシリーズ、Capriccio(奇想画)なのです。

   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ご挨拶と解説が後先になりました。
新しいカテゴリを始めます。
これは全くの映像遊びでして、もとは毎年一回のグループ展に出したもの。
今年の展覧会のご案内をこのブログ上でしたところ、見に行けないからアップしろとのリクエストがありました。
折しも此のシリーズも40枚足らずでおしまいになって〜背景と彫刻の在庫が出払って、もう補充に行く気力体力金力ともないものですから〜では月一か10日に一枚くらい載せて見るべぇ〜、と言う次第です。
ついでにあること無いことギリシャ神話風〜的解説〜時には創作〜をいれてみるかいな、ってとこなのです。
どうか肩肘張らずにお楽しみ下さい。

今回のこれ、一年目の初心で作った数点のひとつで、一応良くできています。
そして、このパリスの審判、”何事にも過たざる英知”と言うものが権力や美女と同格に扱われているところに、ギリシャらしさを感じて好きなのです。


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